うつ病患者だった視点からストレスチェックについて考えてみる

皆さんはストレスチェック制度をご存知でしょうか?これは平成27年度12月1日に労働安全衛生法の改正にともない施行された制度で、従業員50名以上の事務所に全従業員に対するストレスチェックを義務付けるものです。平成28年11月末までに1回は実施する必要がありますので、今実施に向けて準備をしている会社も、もう終わったという会社もあるかもしれませんね。

さて制度の内容ですが、厚生労働省が公開している制度導入簡単マニュアルをご覧いただくのがよいかと思います。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

僕なりにまとめると制度のポイントはこんな感じ。

  • 好ましくないストレス反応が強く出ている従業員に気付きを与える。
  • 気付いた従業員は自分の意思で面談を受ける。
  • 面談内容を受けて必要に応じて、会社が「就業上の措置」を実施する。

ではこの制度、元うつ病患者の僕の視点から見てみると次のように映ります。

チェックそのものには意味がない。

僕のうつ病の症状は気分の落ち込みと不眠から始まりました。そして自分の不調に気がつき心療内科を受診しました。メンタルに不調を抱えてる人の大多数は自覚症状があるでしょうから、わざわざ「気付きを与える」必要はないと感じます。ただし、身体症状が主訴である仮面うつ病の方に対しては一定の効果が見込めるかもしれません。

「就業上の措置」が鍵

労働安全衛生法の第66条の10の6にあるように、事業者は面接結果から出された医師の意見を勘案し、必要に応じて就業上の措置をとる義務があります。長時間労働など、就業上の問題がメンタルの不調を引き起こしている場合には効果があると考えられます。僕に場合は、恒常的な深夜残業がメンタル疾患の引き金になったと考えられるので、もし今回のような制度があって、且つ就業上の措置をとってもらえていれば、休職するほどまでには悪化しなかったかもしれません。
ただし、この「就業上の措置」にも問題がないわけではありません。

効果的な措置とは?

単に残業時間のみが問題なのであれば措置のとりようはあります。一方で、業務の難度、職制のサポート不足、パワハラ等ではどのような措置を採れば良いのでしょうか。配置転換をすれば良いようにも感じますが、当人のキャリアプランにも配慮する必要もあり、一概に配置転換が最良とも言えません。このように適切な「就業上の措置」を決めることは大変難しい問題と言えましょう。

多くの関門

メンタルの不調を自覚して、可能であれば何らかの対策を打ってもらいたいと感じていても、就業上の措置をとってもらうまでにはいくつもの関門があります。

  • ストレスチェックで高ストレスと判断される。
  • 面接の結果、医師が事業者に対しては就業上の措置が必要であるとの見解を示す。
  • 事業者が医師の意見を勘案し、就業上の措置が必要であると判断する。

さて、実際の現場でこの三つの関門をすべて超えられるケースはどの程度有るのでしょうか。全ては関係する医師と事業者のコンプライアンス意識に委ねられています。


さて、ここまでストレスチェックに対する僕の考えを述べてきました。様々な背景もあるのでしょうが、先ずはこのような制度が始まったこと自体を歓迎します。事業者やこの制度に係わる医師は、この制度の精神を真摯に受け止め、誤った運営をしないようお願いしたいところです。